LONG INTERVIEW

その子がわかるところまで戻れば、
数学は、全員わかるようになる。
数学科教員
Shiho Kido
〈プロフィール〉
大学での専門は幾何学。数学の分野では「ベクトル」が一番好き。小さい頃から折り紙が好きだった影響で図形が好きになった。美術も好きで、絵を描くことが大好きだった。大学卒業後は、予備校講師、教材開発会社を経て、2025年1月入職。
私は、自分は数学苦手だって思ってる子でも、できる部分は絶対あると思っています。「この問題はできる」って思うと、数学に対しての嫌悪感がなくなる。できる問題が増えていくと、「楽しいな」という気持ちが芽生える。そこを大人が見逃さずに、できることを増やしていって、もっともっとという気持ちになるまで繰り返していけば、もう苦手はさよならなんです。
大切なのは、わかるところまで戻ること。ただ、従来の、40人の教室で先生が一方的に解説するやり方では、ひとりひとりがどこでわからなくなっているのか、先生も、生徒本人も、把握できません。だから、個別最適な学習やそのためのシステムが必要になるんです。AIを活用する個別最適学習や、振り返りながら進めるオンデマンド教材なら、それが可能になります。
今、本校の生徒専用のLMS(学習管理システム:Learning Management System)を、ゼロから作っています。既存の教材やシステムを導入するケースが多いと思いますが、それだとどうしても、教材ごとに使い方が違ったり、成績管理がバラバラになるなど、手間ばかり増えて使い勝手が悪くなる。だから、湧水では、本校の理念に基づいたLMSをゼロから作ります。すごく大変ですが、教員としてこんなチャンスはまずないと思うし、これこそ私がやりたかったことなので、面白くてたまりません。大好きな数学の面白さや美しさを、どうやったら生徒たちにも感じてもらえるのか。教科書にのっていない数学の面白さを発見してもらえるような教材と、数学が楽しくなる授業を開発中です。

今は中学のクラスを担当していますが、数学は苦手な子が過半数で、最初は苦戦してる子も多かったけど、2学期になって前向きに取り組んでくれるようになってきました。たとえば、平方根を授業で扱った時には、教科書では白銀比の話がのっているけど、世の中には黄金比の方が多いから、学校内で黄金比をさがしてみよう、って探検に出かけてみたり。自動販売機の一部が黄金比になってる!と見つけた子がいて、すごく嬉しそうに教えてに来てくれました。葛飾北斎の波の絵、あの中にも黄金比が隠れてるんですよ。数学って、社会で全然使わないじゃん、って言われるけど、実は、数学がないと成り立たないものってたくさんあります。
今、基礎学力が必要とよく言われますが、では、なぜ必要かと考えると、基礎学力があるとものごとをいろんな視点で見られるんですよね。ネット上でもよく言われることですけど、水の入ったコップが目の前にあったとして、理科を学べば「1リットルの水」だし、国語力が付けば「透き通った水」、社会の知識があれば「この地域の水」かもしれない。これが、選択肢が増えるということだと思うんです。選択肢が増えれば、自分がどう生きていくか、より自分がやりたいものに近づいていける。
数学って暗記科目ではない。確かに、公式とか暗記することもあるけど、あくまでもひとつの手段。それよりも、必要なのは、あらゆるやり方を試行錯誤して考えていろんな問題に向きあう力や、粘り強さ。そのために、数学は最高のトレーニングなんです。そういった人生を生き抜く力も磨かれるから、数学ってよくわからないから嫌いって投げ出しちゃうのは、すごくもったいないんです。だから、私は、全員に、数学がわかる楽しさを知ってほしいと思って日々生徒と向き合っています。

